Home >  ブログ一覧 >  業務設計者と現場のギャップとは?~建て前を取り去った一丸体制の業務改善~

CATEGORY:コラム facebookLINE
TAG:

業務改善現場設計者ギャップ残業内的動機外的動機リスク課題意識SVOP

2018/06/01

業務設計者と現場のギャップとは?~建て前を取り去った一丸体制の業務改善~

現場と一緒になって業務改善を行う"常駐型コンサルティング"の中身を、事例をもとに解説いたします。
今回は、業務改善コンサルで感じる「業務設計者と現場とのギャップ」について、実際のSVの例を用いて解説してきます!
コールセンターでは多くの場合、現場と業務設計者の考え方にギャップがあります。
ここで言う「現場」とは、SVやコミュニケーターなど顧客対応の前線に立つ人たちを指します。
また「業務設計者」とは、管理職や事業企画系の部署の社員などです。コールセンターのファシリティ、フロー、KPIといった枠組みを設計する人たちのことを指します。

コールセンターの業務に効率的でないプロセスや、顧客満足に添わない部分があるなら、設計者と現場で業務改善に取り組むことになります。
そのとき成功の鍵となるのは、現場と設計者の間にあるギャップを埋めることです。
そのためには現場に出向くことが高く効果的であると考えています。
現場と設計者のギャップ
現場と設計者の間にあるギャップとは、業務について着目する部分の違いです。

◎設計者
KPI、売上、事業の展望など※数値的かつ、大局的

◎現場
オペレーションのコスト、クレーム化のリスク、コミュニケーターにスキルセットできるかなど
※感覚的(日々実感している苦労)かつ、局所的


設計者がKPIなどから得られた課題認識をもとに業務改善を提案した場合、現場から「今の業務で手一杯なので、改善に回せる工数はない」といった反応が返ってくるのは、よくある話です。
日々苦労している感覚が強く働くため、コストやリスクのほうに視線が向いてしまうのです。
現場にとって業務改善は、伝え方1つでただの理想論に映ります。そして、設計者は「現場は何を言っても渋る」と苦々しく思うのです。
ギャップを埋めるために
現場と設計者のどちらも間違ったことを言っているわけではありません。できることなら業務を良くしたいという思いは同じなのです。
なのに、考え方にギャップがあるために対立関係に見えてしまう──。
そんな場合、相手側の考え方に寄せた説明方法を模索する必要があるのです。

例えば、コンサルタントとして業務改善の調整を行うときは、次のような接し方を心掛ける必要があると考えています。
まず現場が言う「工数不足」を設計者に伝えるときは、業務改善のために必要な時間分だけ定常業務のプロセスを簡略化した場合のリスクを提示し、そのうえで、無理なく業務改善を回せる方法を考えましょうと持ち掛けます。
次に、設計者の目線から現場へ業務改善の必要性を伝えるときは、相手が日々実感している問題点に紐づけて提案するようにします。
実例に触れてみよう。
あるSVの例
かつて携わったコールセンターの業務改善では、各SVに属人化した業務が多すぎることが大きな課題となっていました。
特にベテラン格のあるSVは現場の中心である立場上、複雑な相談事の大半が回ってきます。自分本来の仕事ができるのは定時を過ぎた後だけで、夜遅い帰宅が慢性化していました。

SVの持つノウハウを有形化し、可能な限りコミュニケーターに判断軸を渡すなど、改善の余地はあります。
それでも、多忙なSVをつかまえてノウハウを聞き出すことは、短期的には貴重な時間を奪うことになります。
SV自身も当初は業務改善に対し「それは今やるべきことなのか?」と消極的な姿勢を見せていました。

そこで業務改善の必要性を伝えるとき、SVの苦労に触れ、「時間はかかるかもしれない。それでも効果が出れば、平日もプライベートを充実させられる職場になるかもしれない」と説得した結果、SVの姿勢は軟化しました。
業務平準化のプロジェクトは、はじめのうちSVの残業が増えたのですが、研修1つで別部門に移譲できる業務を明らかにするなど、即効性の高い施策から順に実行しました。
臨時で高まるコストの吸収に努めながら、想定よりも早く3カ月ほどで効果が現れ始めました。
SVたちの残業は目に見えて減り、対して、低めだったコミュニケーターたちの稼働率が適正値になっていったのです。
当のSVはその後に、この業務改善に取り組んでよかったと語ってくれました。
そして、いまとなっては、以前のプロセスでもう一度仕事をするなど到底考えられないとも──。
内的動機付け
「平日もプライベートを充実させられる職場にしたい」とは、ごく個人的な課題意識のように見えるかもしれません。

こういった率直な願望に基づいて行動することを、心理学用語では「内的動機付け」が得られた状態と言います。人間は「内的動機付け」を持つことで、成果の品質やスピードが格段に高まると言われています。

一方、一向に定着しない業務改善は、参加する人々が「言われたからやる」「そういう役職だからやる」といった「外的動機付け」で取り組んでいることが多いです。
このとき関係者たちの当事者意識は薄いため、新たなプロセスを導入しても風化する可能性が高くなります。
業務改善が成功する鍵は、現場の「内的動機」を把握すること、そして業務改善の目的はそんな思いと相反するものではないと理解してもらうことにあります。
現場の人々の率直な思いを聞き出すには、心を開いてもらう必要があるのです。
現場に行って顔を合わせ、同じツールに触れて、ヒアリングの際はよく聞き、否定せず、一緒に考える姿勢を示す──。
そうして聞こえてくる現場の声は、業務改善を考えるにあたって重要なヒントばかりです。
何より、そこまでする姿を見て、現場の人たちも「この人が言うなら力になりたい」と思ってくれるようになるのです。そんな状況を作り出せるのは、現場に足を運ぶ者だけです。

業務改善は机上の空論ではありません。サービスの最前線である現場の人たちに理解され、実行してもらえて初めて意味があります。
本来立場が違う現場と設計者の目線をすり合わせ、みんなが同じゴールに向かって走り出すこと。
弊社がコールセンターの業務改善に参画するとき、そんなパイプラインになることを大切にしています。

ブログ一覧に戻る